士業事務所の繁忙期は、12月の年末調整から翌年1月31日の各種提出、3月15日の確定申告まで、期限が切れ目なく続きます。 この時期に抜けや遅れが出る原因の多くは、作業の量そのものより、顧問先からの資料が遅れて作業が後ろに寄ることと、事務所内で誰がどの顧問先の何を持っているかが見えないことです。

段取りの基本は、法定の期限を先に並べ、そこから逆算して「資料の依頼日」と「事務所内の締切日」を顧問先ごとに決めることです。以下では、国税庁・日本年金機構・厚生労働省などの公表資料で確かめた期限をもとに、繁忙期の進行表の作り方と、令和8年の年末調整で変わる点を整理します。


1. 繁忙期に重なる主な期限

まず、繁忙期に重なる期限を一覧にします。期限が土日祝日に当たる場合の扱いは手続きごとに異なるため、その年の案内で確認してください。

時期手続き期限根拠・確認先
12月年末調整その年最後の給与の支払の際国税庁「年末調整のしかた」
1月20日源泉所得税の納付(納期の特例・7〜12月分)翌年1月20日国税庁 タックスアンサー No.2505
1月31日給与所得の源泉徴収票の交付(受給者へ)翌年1月31日(年の中途の退職者は退職の日以後1か月以内)国税庁 タックスアンサー No.7411
1月31日源泉徴収票・法定調書の税務署への提出支払の確定した年の翌年1月31日同上
1月31日給与支払報告書の市区町村への提出毎年1月31日地方税法第317条の6
1月31日償却資産の申告1月1日現在の資産について1月31日まで地方税法、東京都主税局「固定資産税(償却資産)」
2月16日〜3月15日所得税の確定申告原則として翌年3月15日国税庁 タックスアンサー No.2020
事業年度終了後2か月法人税の確定申告事業年度終了の日の翌日から2か月以内(延長の特例あり)国税庁「法人税、地方法人税及び防衛特別法人税の申告」

社会保険労務士事務所では、繁忙の山がもう一つあります。労働保険の年度更新(令和8年度は6月1日〜7月10日。厚生労働省)と、健康保険・厚生年金保険の算定基礎届(毎年7月10日まで。日本年金機構)が同じ時期に重なります。年末から3月の山と、6〜7月の山を、事務所全体の年間の予定として並べておくと、人の配置と休暇の計画が立てやすくなります。

納期の特例の顧問先は1月20日が先に来る

給与の支給人員が常時10人未満で、納期の特例の承認を受けている源泉徴収義務者は、源泉所得税を1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日に納付します(国税庁 タックスアンサー No.2505)。年末調整の過不足の精算を反映した納付が1月20日に来るため、年末調整を年内に終えられない顧問先があると、1月前半に作業が集中します。


2. 令和8年の年末調整で変わること

国税庁は「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」で、次のように案内しています。

  • 所得税の基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の改正などが、原則として令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税に適用される
  • 令和8年12月に行う年末調整から源泉徴収事務に変更が生じ、令和8年11月までの源泉徴収事務には変更が生じない
  • 「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の様式が前年分から変わっている

事務所として準備しておくことは、次の3点です。

  1. 顧問先に配る様式を令和8年分に差し替える。 前年の様式のひな形を流用しないよう、配布の案内文と一緒に入れ替えます。
  2. 顧問先の担当者向けの説明を1枚にまとめる。 扶養親族の所得要件などが変わると、申告書の記入で迷う従業員が増えます。国税庁の「年末調整のしかた」や記載例へのリンクを添えると、個別の問い合わせを減らせます。
  3. 給与計算ソフトの更新時期を確かめる。 顧問先が使っているソフトの改正対応の時期を、11月中に確認しておきます。

控除額などの具体的な数字は、国税庁の「年末調整のしかた」と「年末調整がよくわかるページ」で最新のものを確認してください。


3. 令和9年1月からの源泉徴収票の提出

国税庁のタックスアンサー No.7411(令和8年4月1日現在法令等)では、源泉徴収票の税務署への提出について、次の変更が示されています。

提出の時期税務署への源泉徴収票の提出
令和8年12月31日以前年末調整をした人のうち、法人の役員は年中の支払金額150万円超、弁護士・司法書士・税理士等は250万円超、その他の人は500万円超などの基準に当たるものを提出
令和9年1月1日以後市区町村に給与支払報告書を提出すると、税務署に提出したものとみなされ、税務署提出用の源泉徴収票を作成・提出する必要がなくなる

令和8年分の年末調整の後、令和9年1月に行う提出は、この新しい扱いの最初の対象になります。これまで「税務署用」と「市区町村用」を分けて作っていた事務所は、1月の作業手順とチェックリストを今のうちに書き換えておくと、繁忙期の最中に迷わずに済みます。なお、提出枚数が30枚以上の場合はe-Taxなどによる電子的な提出が義務になる点は、同じページで案内されています。受給者本人への源泉徴収票の交付(1月31日まで)は引き続き必要です。


4. 逆算の段取り:月ごとの進め方

期限から逆算すると、繁忙期の準備は9〜10月から始まります。

時期事務所でやること顧問先に依頼すること
9〜10月年末調整・確定申告の対象の顧問先を確定。担当者と事務所内の締切日を決める年末調整の実施の有無、従業員数の見込み
11月様式と案内文の準備、給与計算ソフトの改正対応の確認扶養控除等申告書・基礎控除申告書などの回収の開始
12月年末調整の計算、過不足の精算額の確認最後の給与の支給日と金額の確定
1月前半源泉徴収票・法定調書・給与支払報告書・償却資産申告の作成、1月20日の納付の確認償却資産の増減の報告
1月後半提出と控えの保管。確定申告の資料依頼の送付確定申告の資料の準備
2月資料の届いた順に確定申告の作成を開始資料の提出(事務所の締切日まで)
3月前半最終確認と提出。3月15日の直前に集中させない申告内容の確認と承認

事務所内の締切日を法定の期限より前に置く

確定申告の期限は3月15日ですが、事務所内の締切日を2月末などに置き、3月前半を確認と差し戻しの予備日にするのが基本です。顧問先から資料が遅れた場合も、予備日があれば他の顧問先の作業を崩さずに吸収できます。資料の依頼では、依頼日と締切日を顧問先に書面で伝え、督促の日もあらかじめ進行表に入れておきます。


5. 進行表の作り方

繁忙期の進行管理は、表計算でも業務管理のツールでも構いませんが、次の列をそろえると抜けが見えるようになります。

内容
顧問先名称と担当者
手続き年末調整、法定調書、給与支払報告書、償却資産、確定申告など1行1手続き
法定の期限上の表の期限
事務所内の締切日法定の期限より前に置いた日
資料の依頼日 / 督促日 / 受領日3つの日付を分けて記録
作成者 / 確認者別の人にする
状態未着手・資料待ち・作成中・確認待ち・顧問先確認・提出済
提出日と控え提出の方法と受付の記録

1行を「顧問先×手続き」にするのがポイントです。顧問先ごとに1行にすると、年末調整は終わったが償却資産が残っている、といった状態が見えなくなります。

状態は「資料待ち」を分ける

作業が遅れている顧問先のうち、事務所側の作業が遅れているのか、資料が届いていないのかを分けて見られるよう、「資料待ち」を独立した状態にします。資料待ちの顧問先が多い週は督促を優先し、作成中が多い週は確認者の時間を確保する、といった判断ができるようになります。


6. 繁忙期の前に確認するチェックリスト

  • 年末調整・確定申告・法定調書・給与支払報告書・償却資産申告の対象の顧問先を確定した
  • 顧問先ごとに法定の期限と事務所内の締切日を決め、進行表に入れた
  • 納期の特例の顧問先を洗い出し、1月20日の納付を進行表に入れた
  • 令和8年分の様式と案内文に差し替えた
  • 令和9年1月からの源泉徴収票の提出の扱いを、1月の手順書に反映した
  • 提出枚数が30枚以上になる顧問先の電子的な提出の準備を確認した
  • 作成者と確認者を分け、確認者の時間を3月前半に確保した
  • 社会保険労務士業務がある場合、6〜7月の年度更新・算定基礎届の山も年間の予定に入れた

7. 落とし穴

  • 1月20日の納付の見落とし:納期の特例の顧問先は、法定調書の1月31日より先に納付の期限が来ます。
  • 前年の様式の流用:令和8年分は申告書の様式が変わっています。配布前に年分の表示を確認してください。
  • 法定調書の手順が古いまま:令和9年1月以後に提出する給与支払報告書から、源泉徴収票の税務署提出の扱いが変わります。
  • 確認者の不足:作成を急ぐあまり確認を同じ人が行うと、誤りに気づけません。確認者の時間は先に押さえておきます。
  • 資料の遅れを個別に追う:督促を担当者任せにすると、顧問先によって対応がばらつきます。依頼日・督促日を進行表で一覧できるようにします。

8. まとめ

  • 年末調整の源泉徴収票・法定調書・給与支払報告書・償却資産申告は1月31日、所得税の確定申告は3月15日が期限。納期の特例は1月20日
  • 令和8年度税制改正の基礎控除の引上げなどは、令和8年12月の年末調整から反映される
  • 令和9年1月1日以後に提出する給与支払報告書から、税務署提出用の源泉徴収票が不要になる
  • 進行表は「顧問先×手続き」で1行にし、事務所内の締切日と「資料待ち」の状態を分けて管理する

期限や様式は年ごとに変わることがあります。作業の前に、国税庁と提出先の市区町村の最新の案内を確認してください。

参考資料