認定経営革新等支援機関(以下「認定支援機関」)は、中小企業等経営強化法第31条にもとづいて国が認定する、中小企業への専門性の高い支援の担い手です。平成24年8月30日に施行された中小企業経営力強化支援法(現在の中小企業等経営強化法)で制度がつくられ、税理士・中小企業診断士などの士業事務所の多くが認定を受けています。

士業事務所にとっての要点は3つです。法律が定める業務は「経営の状況の分析」と「事業計画の策定・実行への指導と助言」であること、認定は5年ごとの更新制で、更新では直近5年間の実績が見られること、そして融資や経営改善の支援など、認定支援機関の関与が条件になる施策があることです。以下、中小企業庁・中小企業基盤整備機構・日本政策金融公庫の公表資料と、e-Gov法令検索の条文にもとづいて整理します。


1. 法律が定める認定支援機関の業務

中小企業等経営強化法第31条第2項は、認定支援機関が行う業務(経営革新等支援業務)を次のように定めています。

業務の内容(条文の要旨)
第1号経営革新または経営力向上を行おうとする中小企業等の、経営資源の内容、財務内容その他経営の状況の分析
第2号経営革新のための事業または経営力向上に係る事業の計画の策定に係る指導・助言と、計画に従って行われる事業の実施に関し必要な指導・助言

中小企業庁の「認定経営革新等支援機関」のページでは、支援の流れを「経営状況の把握(財務分析、経営課題の抽出)」「事業計画作成(計画策定に向けた支援・助言)」「事業計画実行」「モニタリング・フォローアップ(巡回監査の実施・改善策の提案など)」と示しています。計画を作って終わりではなく、実行とその後の確認までが支援の範囲とされている点が、顧問業務と相性のよいところです。

認定の申請で書く事項

同条第3項により、認定の申請書には、氏名・名称と住所、事務所の所在地、経営革新等支援業務の内容と実施体制などを書きます。第4項により、名称・住所・事務所の所在地が変わったときは遅滞なく、業務の内容や実施体制を変えようとするときはあらかじめ(軽微な変更を除く)、届け出なければなりません。中小企業庁は、個人で認定を受けた機関が法人になった場合などは廃止の手続きが必要になると案内しています。事務所を法人化する予定がある場合は、認定の手続きも一緒に計画しておきます。


2. 認定の基準:士業はどこに当たるか

中小企業庁の「具体的な認定基準について」では、認定の基準を次のように示しています。

基準内容
(1) 専門的な知識次の(イ)〜(ハ)のいずれか。(イ) 税務・金融・企業財務の専門的知識が求められる国家資格等を持つこと(税理士法人、税理士、弁護士法人、弁護士、監査法人、公認会計士、中小企業診断士、金融機関のみ)。(ロ) 経営革新計画などの策定に主たる支援者として関与し、計画の認定を3件以上受けていること。(ハ) 中小機構が指定する経営改善計画策定支援研修(理論研修)の試験に合格するなど、同等以上の能力があること
(2) 実務経験中小企業・小規模事業者の支援に関し、法定業務に係る1年以上を含む3年以上の実務経験、または同等以上の能力(中小機構の実践研修の試験に合格するなど)
(3) 事業基盤法定業務を長期間にわたり継続的に行うための組織体制(法人の場合)と事業基盤(財務状況の健全性、窓口となる拠点、適切な運営の確保など)
(4) 欠格条項法第32条の欠格条項(禁錮以上の刑の執行後5年を経過しない者、法第36条で認定を取り消されて5年を経過しない者など)に当たらないこと

税理士・弁護士・公認会計士・中小企業診断士は(1)の(イ)に当たりますが、(2)の実務経験は別に求められます。 社会保険労務士・行政書士は(イ)に列挙されていないため、(ロ)の計画の認定実績か、(ハ)の研修の試験の合格で専門的な知識を示すことになります。

中小企業庁は、主たる支援者の実績として認められない例も示しています。申請予定の支援機関どうしで互いに経営力向上計画を作り合うこと、1つの計画に対して「主たる支援者として関与した証明書」が不自然に複数の者に出ていること、支援者と支援先の代表者が同一であることなどです。


3. 5年ごとの更新と申請の日程

中小企業等経営強化法第33条により、認定は5年ごとに更新を受けなければ、その期間の経過によって効力を失います。 更新の審査について、中小企業庁は次のように示しています。

  • 更新の場合、(1)の(ロ)(ハ)と(2)の対象期間は、直近の認定日から更新申請日まで(最大5年間)
  • (1)(ロ)で申請する場合は、その期間に主たる支援者として関与し認定などを受けた計画が3件以上あること(計画の変更認定は対象外)
  • 過去の認定申請で使った関与の証明や実務経験証明書は使えず、過去の認定有効期間内の実績と実務経験が対象になる

つまり、認定を受けた後に支援の実績を積んでいないと、更新で基準を満たせないことがあります。支援の記録(支援先、計画の種類、関与の内容、日付)は、更新に備えて事務所で一覧にしておきます。

申請の窓口と日程

金融機関以外は「認定経営革新等支援機関電子申請システム」から新規・更新の申請を行います(金融機関は金融庁のページから)。中小企業庁は、新規の認定について2か月ごとの認定日と申請の締切日を公表しており、たとえば第100号は受付期間が2026年8月24日〜9月24日、認定日が2026年10月27日です。更新についても、認定有効期限日ごとに申請締切日と更新認定日(予定)を一覧にしています(いずれも2026年3月27日更新のスケジュール。変更される場合があります)。自機関の認定有効期限日は、認定経営革新等支援機関検索システムで確認できます。

確認すること確認先
自機関の認定有効期限日認定経営革新等支援機関検索システム
更新の申請締切日中小企業庁「経営革新等支援機関の認定の更新スケジュール」
更新申請の方法中小企業庁「具体的な更新申請の方法」
名称・所在地などの変更中小企業庁「認定経営革新等支援機関の変更手続」

4. 認定支援機関の関与が条件になる施策

中小企業基盤整備機構の「認定経営革新等支援機関への支援」のページは、認定支援機関の関与を必要とする施策の関連リンクとして、次のものを挙げています。

施策実施主体
認定経営革新等支援機関による経営改善計画策定支援事業中小企業庁
新規開業・スタートアップ支援資金(中小企業経営力強化関連)日本政策金融公庫
経営支援型セーフティネット貸付日本政策金融公庫
経営支援型の企業再生貸付日本政策金融公庫

たとえば日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金(中小企業経営力強化関連)」は、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方のうち、中小企業の会計に関する基本要領または指針を適用している(する予定の)方で、自ら事業計画書を作り、認定経営革新等支援機関による指導・助言を受けている方を対象としています。

補助金で認定支援機関の関与が求められるかどうかは、補助金の種類と公募回によって変わります。 過去に関与が求められた補助金でも、後の公募で扱いが変わることがあるため、支援を引き受ける前にその回の公募要領で確認してください。補助金の申請支援の進め方は、別の記事で扱います。


5. 事務所として認定をどう生かすか

認定は、それだけで顧問先が増える資格ではありません。法律が定める業務が「分析」と「計画の策定・実行への助言」であることを踏まえると、次のように顧問業務と組み合わせるのが自然です。

  1. 月次の数字から経営の状況の分析を定期的に行う。 決算の前後に、財務分析と課題の抽出を顧問先と共有します。
  2. 融資や設備投資の前に事業計画を一緒に作る。 計画は事業者自身が作るのが前提の施策もあるため、事務所は作り方の助言と数字の検証に徹します。
  3. 計画の実行を月次の面談で確かめる。 中小企業庁が示すモニタリング・フォローアップの段階にあたり、支援の実績の記録にもなります。
  4. 支援の記録を一覧にしておく。 5年後の更新で、直近の実績と実務経験を示す材料になります。

検索システムの登録内容を整える

認定支援機関は、中小企業庁の検索システムで所在地や得意分野などから検索されます。中小企業庁は「公表事項の掲載、変更について」のページで、公表事項の掲載と変更の方法を案内しています。事務所の得意分野や対応地域が古いままになっていないかを、年に一度は確認しておくとよいでしょう。


6. チェックリスト

  • 自分が認定基準(1)の(イ)(ロ)(ハ)のどれに当たるか確かめた
  • 法定業務に係る1年以上を含む3年以上の実務経験を示せる
  • 自機関の認定有効期限日を検索システムで確かめ、更新の申請締切日を予定に入れた
  • 直近の認定日以後の支援の実績を一覧にしている
  • 名称・所在地・法人化などの変更があれば、届出または廃止・新規の手続きを確認した
  • 支援する施策ごとに、認定支援機関の関与の要否を最新の公募要領・制度の案内で確かめた
  • 検索システムの公表事項(得意分野など)を最新の内容にした

7. まとめ

  • 認定支援機関は中小企業等経営強化法第31条にもとづく制度で、業務は経営の状況の分析と、事業計画の策定・実行への指導と助言
  • 税理士・弁護士・公認会計士・中小企業診断士は専門的な知識の基準を満たす分類に入るが、実務経験と事業基盤の基準は別に求められる
  • 認定は5年ごとの更新制(法第33条)。更新では直近の認定日以後の実績と実務経験が審査される
  • 日本政策金融公庫の融資制度などで認定支援機関の指導・助言が条件になる。補助金での扱いは公募回ごとに確かめる

制度の運用は変わることがあります。申請の前に、中小企業庁の最新の案内を確認してください。

参考資料