紹介以外の経路を増やす手段として、士業の紹介サイト・ポータルへの掲載を検討する事務所は少なくありません。地域や業種で事務所を探す依頼者に見つけてもらえる一方、紹介サイトの仕組みによっては、士業法や会則が定める「非資格者との提携の禁止」「名義貸しの禁止」「紹介料の上乗せ・要求の禁止」に触れるおそれがあります。

この記事は、税理士法・社会保険労務士法・行政書士法・行政書士職務基本規則の該当条文にもとづいて、紹介サイトに掲載する前に確認すべき点を整理します。


紹介サイトの何を確認する必要があるのか

紹介サイト・ポータルには、大きく分けて2つの形があります。

  • 掲載型:事務所の情報を掲載し、依頼者からの問い合わせを事務所に取り次ぐ
  • マッチング型:依頼者の相談内容をもとに、運営会社が事務所を選定・提案する

どちらの形でも、運営会社が事務所の紹介にとどまらず、見積もりの作成や契約条件の交渉、業務そのものの一部を代行していないかが最初の確認点です。資格者でない運営会社がこれを行うと、非資格者による業務の実施にあたるおそれがあり、その運営会社から紹介を受け続けることが、事務所側の会則違反にもつながります。


非資格者が業務を行っていないかの確認

税理士・社会保険労務士・行政書士には、それぞれ資格者でない者が業務を行うことを禁じる条文があります。

資格根拠内容(要旨)
税理士税理士法第52条税理士又は税理士法人でない者は、税理士業務を行ってはならない
税理士税理士法第53条第1項・第2項税理士でない者は税理士又は税理士事務所に類似する名称を、税理士法人でない者は税理士法人に類似する名称を用いてはならない
社会保険労務士社会保険労務士法第27条社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、報酬を得て労働社会保険諸法令にもとづく書類の作成等を業として行ってはならない
社会保険労務士社会保険労務士法第26条社会保険労務士でない者は、社会保険労務士又はこれに類似する名称を用いてはならない
行政書士行政書士法第19条行政書士又は行政書士法人でない者は、業として行政書士の業務を行うことができない

そのうえで、資格者の側に向けた規定があります。

  • 日本税理士会連合会会則第61条(非税理士との提携の禁止):税理士及び税理士法人は、法第52条又は法第53条第1項若しくは第2項の規定に違反する者から業務のあっ旋を受けてはならない
  • 社会保険労務士法第23条の2(非社会保険労務士との提携の禁止):社会保険労務士は、第26条又は第27条の規定に違反する者から事件のあつせんを受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない

つまり、紹介サイトの運営会社自体が資格者でない場合、その会社が業務の一部を代行していれば、資格者側が「違反者からのあっせんを受けた」ことになりかねません。 掲載を検討するときは、契約書や利用規約で、運営会社の役割が「紹介・取次ぎ」にとどまり、見積もりの提示・契約条件の交渉・業務の実施を行わないと明記されているかを確認します。


名義貸しにならないかの確認

もう一つの確認点は、契約の主体が誰になっているかです。日本税理士会連合会会則第61条の2(名義貸しの禁止)は、税理士及び税理士法人は、何人にも税理士又は税理士法人としての自己の名義を利用させてはならないと定めています。

紹介サイトの中には、運営会社が依頼者と先に契約し、実務だけを登録事務所に割り振る形のものがあります。この場合、依頼者から見た契約相手が運営会社になり、資格者は名義だけを貸す形になっていないかを確かめる必要があります。契約書に、依頼者と資格者本人(または資格者の所属する事務所)が直接契約を結ぶ形になっているかを確認してください。


紹介料の負担と表示

紹介料の負担のしかたにも、確認すべき規定があります。

  • 行政書士職務基本規則第15条第3項:行政書士は、依頼者の紹介を受けたことについて、その紹介の対価を依頼者の報酬に上乗せしたり、職務内容と比較して法外な金額を請求したりしてはならない
  • 行政書士職務基本規則第15条第4項:行政書士は、依頼者の紹介をしたことについて、その対価を要求してはならない

紹介サイトの多くは、契約成立時に事務所側が紹介料を支払う成功報酬の形をとっています。紹介料は事務所の経費として負担し、依頼者に請求する報酬へ上乗せしないことが基準になります。見積もりや請求書に、紹介料相当額を別途上乗せしていないかを確認してください。

なお、中小企業診断士は、中小企業支援法上、業務そのものを法律で独占する資格ではないため、上に挙げた非資格者との提携・名義貸しに関する規定はそのままは当てはまりません。ただし、所属する協会の倫理規程で、依頼者の利益を害するおそれのある広告・勧誘が制限されている場合があるため、所属協会の規程を確認してください。


掲載前のチェックリスト

  • 運営会社の役割が「紹介・取次ぎ」にとどまり、見積もりの提示・契約条件の交渉・業務の実施を行わないと、契約書や利用規約に明記されている
  • 依頼者と契約する主体が、運営会社ではなく資格者本人(または所属する事務所)になっている
  • 業務の説明・見積もり・契約の締結は、資格者自身が行う流れになっている
  • 紹介料は事務所側が負担し、依頼者への請求に上乗せしない
  • 契約前に、依頼者の紹介を受けたことの対価として、他の資格者や事業者に金銭を要求する構造になっていない

実行時の落とし穴

  • 「集客代行」をうたう業者に、見積もりや条件交渉まで任せてしまう:非資格者による業務の実施にあたるおそれがある
  • 紹介料を報酬に上乗せして請求する:行政書士職務基本規則第15条第3項が禁じる行為に該当しうる
  • 複数の紹介サイトに掲載し、契約条件の違いを把握しないまま運用する:どのサイトが名義貸しに近い形になっているか、個別に確認する
  • 紹介サイト経由の依頼者情報を、他の広告に無断で転用する:紹介サイトの利用規約と、依頼者への説明の両方を確認する

まとめ

  • 紹介サイト・ポータルへの掲載前には、運営会社が見積もり・契約条件の交渉・業務の実施を代行していないかを確認する。代行していれば、非資格者との提携の禁止(税理士法第52条・会則第61条、社会保険労務士法第27条・第23条の2、行政書士法第19条)に触れるおそれがある
  • 契約の主体が運営会社ではなく資格者本人になっているかを確認する。名義貸しの禁止(日本税理士会連合会会則第61条の2)に注意する
  • 紹介料は事務所側が負担し、依頼者への請求に上乗せしない(行政書士職務基本規則第15条第3項・第4項)
  • 中小企業診断士は業務独占資格ではないため上記の条文はそのまま当てはまらないが、所属協会の倫理規程を確認する

セミナーや発信での集客の設計は士業事務所のセミナー集客、ホームページに載せる情報の決まりは士業事務所のホームページに載せる情報で整理しています。

参照した資料

条文や規則は改正されることがあります。掲載契約を結ぶ前に、所属する会の最新の会則・規則を確認してください。