顧問先が増えるほど、申告・届出の期限を個人の記憶やメールの見落としで管理するのは限界があります。 1件の期限超過が、顧問先との信頼関係や、場合によっては顧問先自身の不利益につながることもあります。
この記事では、期限管理表に入れるべき項目、期限が近づいたときの知らせ方、抜けと遅れを防ぐ進行管理の仕組みを整理します。
なぜ期限管理は属人化しやすいのか
顧問先が少ないうちは、担当者の記憶やカレンダーへの手入力で期限を管理できます。しかし、顧問先が増えると、次のような問題が起きやすくなります。
- 担当者ごとに管理の方法が違い、事務所全体で状況を把握できない
- 担当者が休んだ、退職したときに、期限の情報が引き継がれない
- 顧問先ごとの特例(納期の特例など)が個人の記憶にしかなく、他の人が代わりに対応できない
これらは、事務所全体で共有できる期限管理表を作ることで解消できます。表計算ソフトでも、専用の進行管理ツールでも構いませんが、事務所の誰もが同じ場所を見れば全顧問先の状況が分かる状態にすることが目的です。特定の担当者のパソコンやメモにしか情報が無い状態では、共有の効果が得られません。
期限管理表に入れる項目
期限管理表には、次の項目を入れます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 顧問先名 | どの顧問先の業務か |
| 業務の種類 | 法定調書、年末調整、決算・確定申告、算定基礎届、労働保険の年度更新など |
| 法定期限 | 法令で定められた提出・申告の期限 |
| 内部の締切 | 法定期限より前に事務所内で設定する目標日 |
| 担当者 | 誰が担当しているか |
| 進行状況 | 未着手・作業中・確認中・完了など |
| 資料の状況 | 必要な資料が顧問先から届いているか |
内部の締切を、法定期限より前に設定しておくことが重要です。 法定期限そのものを内部の目標にしてしまうと、遅れが発生したときに対応する余裕がありません。数日から1週間程度、前倒しした日を内部の締切にしておくと、トラブルが起きても法定期限までに調整できます。
前倒しの日数は、業務の種類によって変えることもできます。資料の到着が読みにくい業務は前倒しの日数を長めに、事務所内だけで完結する業務は短めに設定するなど、実際の遅れやすさに応じて調整してください。
期限が近づいたときの知らせ方
内部の締切が近づいたら、担当者の記憶だけに頼らず、次のような仕組みで知らせが届くようにします。
- 表計算ソフトの条件書式で、締切が近い行を色分けする
- 進行管理ツールやスケジュール管理ツールのリマインド機能を使う
- 週次・月次の事務所内の打ち合わせで、期限管理表を確認する時間を設ける
あわせて、遅れが生じそうな場合に誰に相談するか、事務所内の相談ルートを決めておくと、抜けが実際の期限超過につながる前に対応できます。担当者が1人で抱え込んで期限を超過してしまう事態を防ぐには、早めに共有できる雰囲気と手順の両方が必要です。
期限管理と進行管理を組み合わせる
期限管理表は「いつまでに終える必要があるか」を管理するものです。これに加えて、それぞれの業務が「今どの段階にあるか」を管理することで、期限に対する遅れだけでなく、そもそも着手が抜けているという事態も防げます。
- 資料回収中:顧問先から必要な資料がまだ届いていない
- 作業中:資料は届いており、事務所内で作業を進めている
- 確認中:作業が終わり、内部での確認・チェックを行っている
- 完了:提出・申告が完了している
期限と進行状況を1つの表で一緒に管理するか、別の表に分けるかは、事務所の規模や運用のしやすさで選んでください。顧問先の資料が届いていないことが遅れの主な原因になっている場合は、資料回収そのものの仕組みを見直すことも合わせて検討してください。
進行状況の区分は、事務所の実際の業務の流れに合わせて増減させて構いません。段階を細かくしすぎると更新の手間が増え、粗すぎると実際の遅れに気づきにくくなります。まずは4段階程度から始め、運用しながら必要な区分を調整してください。
実行時につまずきやすいところ
法定期限だけを管理し、内部の締切を設定しない。 法定期限ぎりぎりで作業を始めると、資料の不足や確認の手間が発生したときに、対応する時間が残りません。
表を作っただけで、更新や確認のルールを決めていない。 表を作った直後は使われても、更新するルールがないと、次第に実態と合わなくなります。誰が、いつ、どのタイミングで表を更新するかを決めてください。
顧問先ごとの特例を、表に反映していない。 納期の特例など、顧問先ごとに異なる制度の適用状況を反映していないと、実際の期限とずれた管理になります。顧問先ごとの特例の有無を確認し、表に明記してください。
担当者の変更があったときに、引き継ぎが表だけで終わってしまう。 表に記載された情報だけでは、顧問先の細かい事情(資料が届きやすい時期、連絡が取りやすい方法など)までは伝わりません。表による管理と、対面での引き継ぎの説明を両方行うようにしてください。
まとめ
- 顧問先が増えると、個人の記憶やカレンダーだけでの期限管理は限界がある
- 期限管理表には、顧問先名・業務の種類・法定期限・内部の締切・担当者・進行状況・資料の状況を入れる
- 内部の締切は、法定期限より前に設定し、対応の余裕を確保する
- リマインドの仕組みと、遅れそうなときの相談ルートを事務所内で決めておく
- 期限管理と進行管理(今どの段階か)を組み合わせると、抜けと遅れの両方を防ぎやすい
顧問先からの資料回収そのものを早める方法は「顧問先の資料回収を早める|依頼の仕方と督促の仕組み」で解説しています。