補助金の申請支援を業務にするとき、多くの事務所が迷うのが報酬の決め方です。着手金だけにするか、採択されたら受け取る成功報酬を入れるか、顧問料に含めるか。決め方を誤ると、公募要領の不適切な行為に当たる、支援者の申告と実際の契約が食い違う、士業法の制限に当たるのどれかにつながります。

報酬の決め方の出発点は、金額ではなく何の作業の対価かです。以下、報酬にかかわる公募要領の決まり、士業法との関係、着手金・成功報酬・顧問料に含める形の比べ方、契約に書く項目、落とし穴、事務所で見直す数字の順に整理します。申請の支援の進め方の全体は補助金の申請支援の進め方の記事で扱っています。この記事では金額の水準は扱いません。


1. 報酬にかかわる公募要領の決まり

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(以下「ものづくり補助金」)の第23次公募要領(2026年2月6日)には、支援者の報酬にかかわる決まりが 3 つあります。

不適切な行為の例

公募要領の冒頭の「重要事項」は、認定経営革新等支援機関や専門家などの事業計画書作成支援者について、事業者による事業の遂行や計画達成を企図しない不適切な業者に注意するよう呼びかけ、次の例を挙げています。

  • 作業等にかかる実際のコストと乖離した高額な成功報酬等を申請者に請求する
  • 申請を代わりに済ませることを主なサービスとし、申請者が理解しない内容のまま申請する
  • 料金体系・支援内容・支援期間が明らかでない、金額や条件が不透明な契約を締結する
  • 受注が増えるといった見込みに十分な根拠がないまま、強引な働きかけを行う
  • 申請書に虚偽の内容の記載を教唆する、または事業計画書作成支援者名を記載しないよう求める

報酬に直接かかわるのは 1 つ目と 3 つ目です。成功報酬という形そのものが禁じられているのではなく、実際のコストと乖離した高額なものが不適切とされています。

支援者の申告

公募要領は、認定経営革新等支援機関などの外部支援を受けている場合、事業計画書作成支援者の名称・支援内容・報酬・契約期間を必ず申告(電子申請システムへ入力)するよう求めています。支援を受けているのに申告されていないことが明らかになった場合は、申請にかかる虚偽として、不採択・採択決定取消し・補助金返還・不正内容の公表などの対象になります。

つまり、事務所の報酬は事業者が申請の画面にそのまま書く数字です。契約の報酬と、申告された報酬が食い違ってはいけません。

申請時の支援者の報酬は補助の対象外

第23次公募要領は、補助対象経費の「専門家経費」について、申請時に活用した事業計画書作成支援者は、専門家経費の補助対象外としています。申請の支援の報酬は、補助金で賄われず、事業者の自己負担になります。事業者に説明するときは、この点を最初に伝えます。

補助金ごとに決まりは違うので、支援する制度の公募要領で同じ 3 点を確かめます。

2. 士業法との関係:「何の対価か」で決まる

行政書士法第19条

令和8年1月1日に施行された改正行政書士法第19条第1項は、行政書士・行政書士法人でない者が、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第1条の3に規定する業務(官公署に提出する書類の作成など)を行うことを制限しています。総務省の通知(令和7年6月13日 総行行第281号)は、「手数料」や「コンサルタント料」等どのような名目であっても、対価を受領して業として官公署に提出する書類等を作成することは違法であるという現行法の解釈を、条文に明示したものと説明しています。

報酬の決め方にとっての意味は、報酬の名前を変えても、中身が書類の作成の対価なら制限に当たるということです。行政書士でない事務所が、事業計画書を作って「採択されたら成功報酬」とする形は、名目が何であれ、書類の作成の対価と見られるおそれがあります。

行政書士でない事務所が報酬を受け取れるのは、経営の状況の分析や事業計画への助言など、独占業務でない作業の対価です。資格ごとに受けられる範囲は補助金と助成金の申請支援の業際の記事で整理しています。

行政書士法第10条の2(報酬の額の掲示)

行政書士は、行政書士法第10条の2第1項により、事務所の見やすい場所に、その業務に関し受ける報酬の額を掲示しなければなりません。行政書士事務所が補助金の申請書類の作成を受けるなら、その報酬の額は掲示の対象です。

所属する士業の会の決まり

士業の会によっては、会則や倫理規程で報酬の決め方や説明について定めていることがあります。報酬の形を決める前に、自分の会の決まりも確かめます。

3. 報酬の形を比べる

補助金の申請支援の報酬の形は、大きく次の 4 つです。

形中身向いている作業気をつけること
着手金支援を始めるときに受け取る公募要領の読み合わせ、聞き取り、数字の根拠の確かめ採択されなくても事業者の負担が残るので、支援の範囲を契約で明らかにする
成功報酬採択されたら受け取る採択後の手続きの支援と組み合わせることが多い実際のコストと乖離した高額なものは公募要領の不適切な例に当たる。何の作業の対価かを書く
作業ごと・時間ごと打ち合わせの回数や時間で受け取る読み返しの往復、交付申請・実績報告の支援事業者が総額を見通せるよう、上限や見込みの回数を書く
顧問料に含める既存の顧問料の中で行う顧問先への助言の範囲の支援支援者の申告に「報酬」をどう書くかを事業者と決めておく。範囲を超える作業は別の契約にする

成功報酬を入れるかどうか

成功報酬には、事業者にとって「採択されなければ払わなくてよい」という分かりやすさがあります。一方で、次の点に気をつけます。

  • 採択の可否だけに報酬を結びつけると、採択後の支援が薄くなりやすい:交付申請・実績報告・事業化状況報告は採択のあとに続きます。成功報酬を入れるなら、採択後の手続きの支援まで含めた作業の対価として位置づけます
  • 補助金の額に比例させると、実際のコストとの関係が説明しにくくなる:公募要領の「実際のコストと乖離した高額な成功報酬」との関係を、事業者と事務所の両方が説明できる形にしておきます
  • 行政書士でない事務所は、何の対価かを特に明確にする:採択を条件にした報酬が、事業計画書の作成の対価と見られないよう、助言の作業の中身を契約に書きます

顧問先への支援と、顧問先でない事業者への支援を分ける

顧問先の決算書と月次の数字を知っている事務所と、はじめての事業者を支援する事務所では、同じ作業でもかかる時間が違います。顧問先向けと顧問先でない事業者向けで、報酬の形を分けて決めておくと、説明がしやすくなります。

4. 契約に書く項目

報酬の形を決めたら、契約に次の項目を書きます。公募要領の「料金体系・支援内容・支援期間が明らかでない契約」に当たらないようにするためと、事業者が申告にそのまま書けるようにするためです。

項目書くこと
支援の範囲公募要領の読み合わせ、聞き取り、数字の根拠の確かめ、読み返しと質問(何往復まで)、採択後の手続きの支援の有無
担わないこと事業計画書の本文の作成(資格の範囲外の場合)、電子申請の操作、事務局との窓口
支援の期間申請までか、交付申請・実績報告・事業化状況報告まで含むか。いつからいつまでか
報酬の形と支払時期着手金・成功報酬・作業ごとのどれか、それぞれ何の作業の対価か、いつ支払うか
採択されなかったとき受け取った報酬の扱い、次の公募回に再申請する場合の扱い
補助の対象外であること申請時の支援の報酬は補助金で賄われず、事業者の負担になること
申告支援者の名称・支援内容・報酬・契約期間を、事業者が申告すること

契約を結んだら、事業者が申告する内容(名称・支援内容・報酬・契約期間)を、契約書から写した 1 枚にして事業者に渡します。申請の画面に入力するときに、そのまま写せるようにするためです。

5. 落とし穴

  • 名目を変えれば大丈夫だと考える:行政書士法第19条は「いかなる名目によるかを問わず」と定めています。「コンサルタント料」「手数料」でも、書類の作成の対価なら制限に当たります
  • 申告と契約の報酬を別にする:申告していない、または実際と違う申告は、不採択や採択決定取消しの対象です
  • 報酬が補助金で賄えると説明する:第23次公募要領では、申請時に活用した支援者は専門家経費の補助対象外です
  • 採択後の支援を契約に書かない:申請までの契約では、採択後の交付申請や実績報告で事業者が止まります
  • 口約束で始める:料金体系・支援内容・支援期間が明らかでない契約は、公募要領の不適切な例に当たります
  • 支援者名を書かないよう事業者に頼む:公募要領の不適切な行為の例に挙げられています

6. 半年ごとに見直す

報酬の決め方を事務所の決まりにしたら、半年ごとに、支援した案件を 1 件 1 行で書き出して次の点を見ます。

見るもの見方
作業の時間案件ごとに、実際にかかった打ち合わせと読み返しの時間
報酬と作業の関係受け取った報酬が、実際の作業の時間と釣り合っているか
契約と申告の一致契約の報酬・支援内容・期間と、事業者が申告した内容が一致しているか
採択後の支援採択後の手続きで、事業者が止まった案件があったか

作業の時間を数えずに報酬を決めていると、「実際のコストと乖離」しているかどうかを、自分でも説明できません。案件ごとの時間を残すことが、報酬の決め方を見直すいちばんの材料になります。

見直しの前に、次の点を確かめておきます。

  • 支援する制度の公募要領で、不適切な行為の例・支援者の申告・専門家経費の扱いを確かめた
  • 報酬が、どの作業の対価かを契約に書いた
  • 行政書士でない事務所は、書類の作成の対価になっていないかを確かめた
  • 成功報酬を入れる場合、実際の作業との関係を説明できる
  • 申請時の支援の報酬が補助の対象外であることを事業者に伝えた
  • 事業者が申告する内容を、契約書から写して渡した
  • 案件ごとの作業の時間を記録している

補助金の決まりは公募回ごとに改訂されます。報酬を決める前に、その回の公募要領と所管官庁の最新の案内、所属する士業の会の決まりを確認してください。

7. まとめ

  • 補助金の申請支援の報酬は、金額より先に「何の作業の対価か」を決めます
  • 第23次公募要領は、実際のコストと乖離した高額な成功報酬と、料金体系・支援内容・支援期間が明らかでない契約を不適切な例に挙げています
  • 支援者の名称・支援内容・報酬・契約期間は、事業者が申告します。契約と申告を一致させます
  • 申請時に活用した支援者の報酬は、専門家経費の補助対象外です
  • 行政書士法第19条は、名目を問わず、報酬を得て官公署に提出する書類を作成することを行政書士でない者に制限しています
  • 案件ごとの作業の時間を残し、半年ごとに報酬と作業の釣り合いを見直します

参考資料