顧問先から「うちで使える補助金はありませんか」と聞かれるたびに、検索サイトを一から調べていないでしょうか。補助金の公募情報は、国・都道府県・市区町村・厚生労働省で出どころが分かれていて、聞かれてから探すやり方では、締切に間に合わない案内や見落としがどうしても出ます。

顧問先に合う補助金を漏れなく拾うコツは、探す順番を逆にすることです。先に顧問先ごとの条件を 1 枚にまとめ、決まった情報源を決まった周期で見て、当たったものだけを案内する。以下、顧問先の条件のまとめ方、情報源の使い分け、見る周期、公募要領で確かめる項目、案内の時期、案内の仕方、落とし穴、事務所で測る数字の順に整理します。申請の支援の進め方は補助金の申請支援の進め方の記事で、資格ごとに受けられる範囲は補助金と助成金の申請支援の業際の記事で扱っています。


1. 先に顧問先ごとの条件を 1 枚にまとめる

補助金の要件は、ほとんどが所在地・業種・規模・何にお金を使うかの組み合わせで決まります。公募情報を見るたびに顧問先の情報を思い出していては時間がかかるので、顧問先ごとに次の項目を 1 枚(表計算なら 1 行)にまとめておきます。

項目書き方の例何に使うか
所在地京都府京都市都道府県・市区町村の制度に当たるか
業種製造業(金属加工)、飲食業業種を指定した制度に当たるか
従業員数と資本金従業員 12 人・資本金 1,000 万円中小企業・小規模事業者の定義に当たるか
この 1 年で予定している投資加工機の入れ替え、予約システムの導入対象経費に当たるか
この 1 年で予定している採用・育成パートを 2 人正社員に、新人研修雇用関係助成金に当たるか
GビズIDプライム取得済み/未取得電子申請に間に合うか
決算月と直近の業績3 月決算・前期は減収売上の減少などを要件にした制度に当たるか
過去に受けた補助金前年度に同じ制度で採択重複の制限に当たらないか

「この 1 年で予定している投資」と「採用・育成」は、顧問先が口に出さないと分からない項目です。月次の面談や決算の打ち合わせで、来期に何にお金を使う予定かを 1 問だけ聞く習慣をつけると、この欄が埋まります。

2. 情報源を出どころで使い分ける

補助金の公募情報は、制度を出す主体ごとに載る場所が違います。1 つのサイトで全部を拾うことはできないので、出どころごとに見る場所を決めておきます。

出どころ見る場所運営特徴
国の補助金Jグランツデジタル庁補助金の電子申請システム。Jグランツで申請を受け付ける制度を探せる
国の補助金・支援策ミラサポplus中小企業庁中小企業向けの支援制度を、経営の課題から探せる。活用の事例も載っている
国と都道府県の支援情報J-Net21 支援情報ヘッドライン中小企業基盤整備機構国・都道府県の補助金・助成金・融資・セミナーを、種類と地域で絞り込める。メールマガジンと RSS がある
市区町村の制度市区町村の産業振興の担当課のページ、商工会議所・商工会の案内各市区町村、各団体全国の一覧には載らないことが多い。顧問先の所在地ごとに見る
雇用関係助成金事業主の方のための雇用関係助成金厚生労働省雇用の維持・採用・育成・処遇の改善の助成金の一覧と最新の要件

使い分けのポイントは次の 3 つです。

  • 国の制度は Jグランツとミラサポplus で拾う:大きな補助金の多くは、この 2 つのどちらかに載ります
  • 都道府県の制度は J-Net21 の支援情報ヘッドラインで地域を絞る:顧問先がいる都道府県だけを見れば、件数は多くありません
  • 市区町村の制度は自分で見に行く:全国の一覧から漏れやすいのは市区町村の制度です。顧問先が集まっている市区町村の担当課のページを、ブックマークしておきます

雇用関係助成金は、厚生労働省のページを正本にします。要件が年度の途中で変わることがあるので、民間のまとめ記事ではなく厚生労働省の案内と支給要領で確かめます。

なお、国・都道府県・政令市の公募を 1 か所で目的・地域・締切から探せるサイトとして、この記事の運営会社が Bizalte を運営しています(Jグランツの公開情報と自治体の公募を集めたもの)。どのサイトを使う場合も、最後は制度ごとの公募要領の原文で確かめてください。

3. 見る周期を決める

情報源を決めたら、誰が・いつ・どこを見るかを事務所の決まりにします。

周期見るもの見方
週 1 回Jグランツ、J-Net21 支援情報ヘッドライン(顧問先のいる都道府県)前回から増えた公募だけを見て、第1章の表と照らす
月 1 回市区町村の担当課のページ、商工会議所・商工会の案内、厚生労働省の雇用関係助成金のページ新しい制度と、要件の変更を見る
年に数回国の予算の動き(概算要求・補正予算・当初予算)次の公募が出そうな制度を見込む

週 1 回の確認は、J-Net21 のメールマガジンや RSS を使えば、見に行く手間を減らせます。担当を 1 人に決め、見た日と当たった件数を記録しておくと、第8章の測り直しに使えます。

4. 公募要領で確かめる項目

当たりそうな制度を見つけたら、案内する前に公募要領の原文で次の項目を確かめます。検索サイトやまとめ記事の要約だけで案内すると、要件の読み違いがそのまま顧問先に伝わります。

項目確かめること
対象者業種・規模・所在地の要件、対象外になる事業者
対象経費何に使ったお金が対象になるか、対象にならない経費
補助率と上限経費のうち何割が、いくらまで補助されるか
公募の期間と締切締切の日時、電子申請の締切が郵送と違うか
申請の方法Jグランツなどの電子申請か、GビズIDプライムが要るか
事業の期間いつまでに発注・支払い・完了が必要か
求められる書類事業計画書、見積書、決算書、認定支援機関の確認書など
重複の制限過去に受けた補助金や、同時に申請する制度との関係
支援者の申告申請を支援する者の名称や報酬の申告が求められるか

とくに事業の期間は見落としやすい項目です。補助金の多くは、交付の決定より前に発注したものを対象にしないので、顧問先がすでに発注を決めている投資は、制度があっても間に合わないことがあります。

5. 案内の時期を逆算する

案内が遅れる原因の多くは、公募が始まってから探していることです。公募の期間は制度によっては 1 か月前後しかなく、その間に顧問先が準備を終えるのは簡単ではありません。

締切の 1 か月以上前に伝える

締切から逆算すると、準備には次の時間がかかります。

  • GビズIDプライムの取得:マイナンバーカードを使ったオンライン申請なら速やかに発行されますが、書類による申請は審査期間が最大 1 か月です(2026年7月9日からの取り扱い)。顧問先が未取得なら、補助金を検討し始めた時点で取得を案内します
  • 見積書と事業計画の準備:設備やシステムの見積もりの取り寄せ、事業計画の検討には、数週間かかるのが普通です
  • 認定支援機関の確認書などの添付書類:求められる制度では、発行する側の日程も押さえる必要があります

このため、締切の 1 か月以上前に顧問先へ伝えることを事務所の目安にします。

次の公募を見込む

国の補助金は、同じ制度が年に何回かに分けて公募されることが多く、前の回の公募要領を読めば、次の回の中身と時期のおおよそが見込めます。また、国の予算は、夏に各府省の概算要求が出て、秋から冬に補正予算、年度末までに翌年度の当初予算が成立するのが通常の流れです。この動きを年に数回見ておくと、公募が始まる前に「この顧問先には次の回が合いそうです」と伝えられます。

6. 顧問先への案内の仕方

案内は、制度の名前だけを送らないことが大切です。次の 5 つを 1 通にまとめて伝えます。

  1. なぜこの顧問先に合うと考えたか:第1章の表のどの項目が当たったか
  2. 制度の要点:対象経費、補助率と上限、締切(公募要領の原文へのリンクを添える)
  3. 間に合うかどうか:GビズIDプライムの有無、発注の予定との前後
  4. 顧問先がすること:申請は顧問先自身が行うこと、準備する書類
  5. 事務所ができること:事業計画への助言、書類の作成を受け持つ士業とのつなぎ方

補助金の公募要領には、申請者自身が内容を理解して申請することを求めるものがあります。案内の段階で「申請の主体は顧問先であること」を伝えておくと、あとの役割分担が話しやすくなります。事務所の資格で受けられる範囲は、業際の記事の表で確かめてください。

7. 落とし穴

  • 検索サイトの要約だけで案内する:要件・締切・対象経費は、必ず公募要領の原文で確かめます
  • 国の一覧だけを見る:市区町村の制度は全国の一覧に載らないことが多く、顧問先の所在地ごとに見に行かないと漏れます
  • 公募が始まってから動く:GビズIDプライムの取得や見積もりの取り寄せが締切に間に合わなくなります
  • 発注したあとに補助金を探す:交付の決定より前の発注は、対象にならないことが多いです
  • 助成金を補助金と同じ窓口で探す:雇用関係助成金は厚生労働省のページが正本です。要件の変更も、そこで確かめます
  • 案内した記録を残さない:誰に何をいつ案内したかが分からないと、同じ顧問先に同じ制度を二度案内したり、案内の漏れに気づけなかったりします

8. 事務所で数えて、半年ごとに測り直す

仕組みを作ったら、次の 3 つを数えます。

数えるもの数え方
案内した件数1 か月に、どの顧問先に何の制度を案内したか
締切までの日数案内した日から締切までの日数。1 か月(30 日)を切った案内が何件あったか
検討に進んだ件数案内のうち、顧問先が申請を検討した件数

半年後に同じ数え方で測り直し、締切まで 30 日を切った案内の割合が下がっているかを見ます。この割合が下がらないときは、見る周期(第3章)か、顧問先の条件の表(第1章)の「予定している投資」の欄が埋まっていないことが原因であることが多いです。

測り直しの前に、次の点を確かめておきます。

  • 顧問先ごとの条件の表(所在地・業種・規模・予定している投資と採用・GビズID)がそろっている
  • 国・都道府県・市区町村・雇用関係助成金の情報源を、それぞれ決めている
  • 誰が・いつ・どこを見るかを事務所の決まりにしている
  • 案内する前に、公募要領の原文で対象者・対象経費・締切・事業の期間を確かめている
  • 締切の 1 か月以上前に案内できたかを、案内ごとに記録している
  • 案内した顧問先・制度・日付を 1 か所に残している

制度の名前・要件・申請の方法は、年度や公募の回ごとに変わります。この記事で紹介したサイトの機能や取り扱いも変わることがあるので、案内の前に各サイトと公募要領の最新の内容を確認してください。

9. まとめ

  • 補助金は「聞かれてから探す」のではなく、顧問先ごとの条件を先に 1 枚にまとめ、当たったものを案内します
  • 国の制度は Jグランツとミラサポplus、国と都道府県の支援情報は J-Net21 の支援情報ヘッドライン、雇用関係助成金は厚生労働省のページ、市区町村の制度は担当課のページと商工会議所・商工会の案内で拾います
  • 週 1 回・月 1 回・年に数回と、見る周期を事務所の決まりにします
  • 案内する前に、公募要領の原文で対象者・対象経費・締切・事業の期間を確かめます
  • GビズIDプライムの書類による申請は審査期間が最大 1 か月なので、締切の 1 か月以上前に案内します
  • 締切まで 30 日を切った案内の割合を数え、半年ごとに測り直します

参考資料